ユードリナの記録【長野県立大学】

長野県立大学や就活、趣味について

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【県大シリーズ第18回】コワレタ構想 第四章:八校目の公立化

第四章。「公立化」という対抗策と管理栄養士養成課程について。

~あらすじ~
批判の嵐の中、私大への説得を続ける長野県サイド。一方で、松本大学による反対署名運動は”11万人の署名”という強烈な結果を生んだ。2018年への開学延期、新大学の予算が提出されないなど、賛成派は配慮を重ねるしかなかった。

 

施設整備専門部会(2013年11月)

新大学の施設に関する専門組織「施設整備専門部会」が立ち上げられた。

2013年11月の初会合にて、2キャンパス案が提案された。短大キャンパスに本体、長野市立後町小学校跡地(2013年3月廃校)に寮と地域貢献施設を作る案である。

委員からは短大キャンパスに隣接する「美和公園」の敷地利用も提案された。美和公園は " 都市公園 " という区分らしく、長野市が管理者の為大学への転用も可能だったと思われる。*1

2か所に分かれることへの否定的な意見もあったが、「学生が行き来することでまちが活発になる」ということで意見集約がなされた。また、小学校跡地の利用については長野市の副知事が好意的な発言をしている。*2

 

続く反発、松本市長も批判的(2014年2月)

2014年2月、県議会において新大学の設計関連の予算が提出された。2月の予算案は4年ぶりの増額予算だったそうで、記者からの注目も高かったようだ。*3

2月13日、" 新県立大学構想の見直しを求める会 " のメンバーが県庁を訪れた。その際に知事は「松本大学の学長と会いたい」という旨を伝えたそう。しかし当の松本大学長は「同じ話をきいても仕方ない」という様子で、話し合いすら否定的だったようだ。*4

続く2月19日、松本市の市議会にて松本市長が、新県立大学について「慎重な声がある中で、県民の理解がないまま予算化するのは極めて拙速」という旨の発言をした。*5

 

先手を打つ私大

長野大学(2014年3月)

新県立大構想に反対していた長野大学が、同年3月、所在地の上田市に対し公立化の要望書を提出した。長野大学理事長と学長は「開学50周年を迎える2016年度に合わせて公立化したい」と表明した。

 

長野県知事は2月7日に新大学の開学時期を「平成30年(2018)」と発言している。新大学の開学前に公立化したい、という長野大の意図は少なからずあったと思われる。

一方、長野県知事にとってこの動きは寝耳に水だったようだ。3月5日の知事会見にて、「長野大の公立化は前々から知っていたのか」という記者の質問に対し「学長と対談した際にはこうした話は全く無かった」と答えている。*6

その後、上田市議会での検討の結果、長野大学は2017年度からの公立化が決定した。

 

諏訪東京理科大学(2014年4月~2015年)

2014年4月、諏訪東京理科大学も公立化の方針を表明。翌2015年9月に茅野市へ要望書を提出した。

長野大学と異なるのは、学校法人東京理科大学県立大学化」を要望していた点だ。長野県サイドも積極的な姿勢だった。しかし同年10月「県立移行は困難」と結論付けた。

結局、学校法人側と茅野市は『諏訪広域連合(茅野市諏訪市岡谷市下諏訪町・富士見町・原村)』を創設。この連合を設置者として、2018年度から諏訪東京理科大学を公立化した。

 

「県が栄養士を養成する必要性高くない」

ここまで記事を読んでくれた皆様には、疑問があろう。管理栄養士養成課程についてだ。

県は当初からこの問題を想定していなかったのだろうか。また、なぜ初期案には入っていなかったのだろうか。

 

準備委員会の設立前に行われたと思われる、「県立大学検討会議」の資料があった。「検討会議における課題の整理」というその資料には、管理栄養士・栄養士の養成に関して次のように書かれている。*7

(1)栄養士 現在の県短大において、栄養士の資格による就職割合が低下しており、また、県内私立短大の栄養士養成課程を含む学科が定員未充足であることから、引き続き県が栄養士を養成する必要性は必ずしも高くないと考えられる。 

(2)管理栄養士 県が新たに養成課程を設置することは、就職先の問題や、先行して設置している松本大学との競合などの課題がある。 

参考 県短大からは、管理栄養士は、栄養、食品工業、健康増進、食育、医療等に関わる総合的な専門職であるので、今後、食品加工・流通、健康・福祉、食育等を中心とした学科を設置し、管理栄養士養成コースを導入したいという要望がある。

県栄養士会では、県と新大学の連携による調査研究の実施など公衆栄養推進上のメリットが大きいことから、管理栄養士養成コースの設置を要望。 

 

つまり長野県としては、

1,栄養士の就職割合が減少・学科も不人気なので必要性は低い
2,管理栄養士は松本大と競合する
3,県短大と県栄養士会からは、管理栄養士コースの要望が出ている

といった形で考えていたのである。

 

第四章まとめ

新大学の施設検討と私大の公立化、管理栄養士課程に関する県の当初の考えを見てきた。ポイントは、「短大の4年制化」という部分は多くが賛成である事だ。論争の主軸は「経営系・管理栄養士課程の学科」にあった。

知事会見からも、メディアがこの点のみを取り上げて論争にしていた様子が見て取れる。

 

次回予告

反発心に取りつかれ侵されていく県立大構想とその支持者。だが彼らは、心を、身体を侵食されながらも、自我を失うことは無かった。

一方、母校の発展のため、私大は屈服を選択する。長野市とともに光と熱となり、11万の署名は消えた。

記憶だけを、人々の魂に残して。

次回、最終回。第五章:屈服。

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