ユードリナの記録【長野県立大学】

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【県大シリーズ第17回】コワレタ構想 第三章:サイン、声のむこうに

「コワレタ構想」第三章。
長野県の融和策や、松本大の反対運動について見ていく。

~あらすじ~

県立大構想の初期案が作られた。しかし周辺私大・六鈴会の2方向から強烈な反発を招いた。議論が続く中、準備委員会は構想案を強行決定。管理栄養士課程を追加した。拙速な決定と管理栄養士課程によりまたしても私大と委員会の反発を招いてしまう。

 

2012~2013の図

 

私大との協調を図るが…(2013年6月)

委員会の構想案を元に、県は24日に基本構想を決定した。私大の反発を抑えるため、県側は次のような取り組みを行った。

説得

構想案が提出された後、阿部知事が松本大学を訪れ学長へ説明を行った。また副知事も諏訪東京理科大学などを訪れた。しかしどちらも理解は得られなかった

差別化

基本構想では、「グローバルな視野を持った人材育成」や「全寮制」「英語プログラム」「留学の必修化」などを強調し、私大との差別化を前面に出した。

また同時に、県内私大の振興案を示すことで私大との協調を目指した。

批判

しかし当時、この「差別化」はあまり県民に理解されていなかったようだ。

2013年6月24日の知事会見では、記者から「グローバル、イノベーションなどわかりづらい」「横文字を散りばめただけ」など批判的な声があがっている。

また、知事が松本大学長と会ったのが6月21日(金)、基本構想決定の発表が24日(月)であった。話し合いが平行線を辿ったのに、拙速ではないかという批判もあった。*1

 

本格的な反対運動へ(同年5月~9月)

構想案決定時の委員会を傍聴していた松本大学長は、「何のための審議なのか。私大の存続を圧迫する設置構想には最後まで反対したい」と批判した。

この時期の反対運動は、以下の通り。

反対決議

同年5月29日、松商学園で決議がされた。新大学の管理栄養士養成課程の設置案に反対するという内容である。反対運動が全学的なものだったとわかる。

署名運動

同年7月、松本大松商学園関係者によって「新県立大学構想の見直しを求める会」(代表:松商学園理事)が結成された。

8月~9月に行われた署名運動には、松商学園高校の同窓会や松本商工会議所などが協力。松本大の学生も駅前に立つなどして協力していた。*2

この結果、約1か月で9万6000人余の署名が集まった。この署名運動は2014年まで続き、2014年2月に1万5000人余りの署名が追加で知事へ提出された。

 

この署名運動によって集まった署名の数は合計で11万人分以上となる。*3

塩尻市の市議会へ提出された、この会の意見書があった。この会の考えが書かれている。

意見書(平成25年9月定例会)/塩尻市公式ホームページ(長野県)

「一定以上の英語能力」という圧力

2013年6月24日の阿部知事の会見によれば、松本大学学長から

新大学の入学者選抜では、TOEFLTOEICの点数を一定以上にしろ。

という旨の要望があったようだ。具体的な点数まで示されたとのこと。*4

これはあくまで想像だが、「グローバル教育を押し出すならこれくらいやってみろ」という松本大からのある種の圧力だったのではと思う。

 

県民の声

松本大主導の署名運動によって生まれた『11万の署名』は、かなりの数である。

松本市の人口が約24万人である。署名した人が全員松本市民だと仮定すると、市内の45%以上が反対派だったことになる。

しかし一方で、かつてから県民より4年制大学を切望する声もあった。

 

2011年11月に行われた長野県の総合計画審議会の資料を見てみる。

総合計画審議会(平成23年11月21日)/長野県

「県民等からいただいたご意見・ご提言」の24ページに、新県立大学に関する県民の声が載っている。いくつか紹介しよう。

・早急に県立の4年制大学をつくってください
長野県短期大学の4年制実現へ、知事の大決断を早急に望む
長野県短期大学の4年制化を強く希望する
長野県短期大学を4年制にし、できることなら南信へ望む
・管理栄養士コースを作って頂きたい
長野県短期大学4年制大学にするという動きには反対。管理栄養士を育成する学部は信州大学に設けて欲しい

 

さらなる延期へ(2014年2月)

2013年9月の県議会で県立大関連の予算が承認された。多くの批判にさらされる中、着々と進む新県立大学設立の準備。

しかしその後、2013年11月の県議会では県立大関連の予算が提出されなかった。9月に提出された9万人以上の署名などに、一定の配慮を示した形だろう。

 

2014年2月7日、長野県の知事会見で阿部知事は「開学目標を平成30年度とする」と発言。

当初は2014年(平成26年)、延期して2017年(平成29年)となっていた開学目標が、さらに延期された。

 

第三章まとめ

  1. 長野県側は「新県立大学は私大と差別化している」と強調
  2. 知事らが県内私大を訪問し、説得を行うも理解は得られず
  3. 松本大らが中心となって、署名運動へ。9万人以上の署名を県へ提出した
  4. 新県立大学の開学目標が『平成30年4月』へと延期

 

次回予告

数々の批判が影響し、2018年へと開学延期する長野県。しかしそれは、私大の思惑に己の業をぶつけてきた結果に過ぎなかった。

県民へと語られる新県立大学の特色。人々は大学に、新たな希望を重ねる。

だが、突如訪れる「長野大公立化」の知らせは、人々に希望を捨てさせた。

 

次回、「コワレタ構想」第四章。

さて、この次もみんなで見てね!

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