大学生ユードリナの記録【長野県立大学】

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発達障害グレーゾーン/ADHD/自閉症/不登校・・・彼らに合う教育とは家庭教師なのか?大学生が受けた衝撃【家庭教師営業体験記②】

家庭教師営業体験記、第二回。大学3年生の時に家庭教師の営業をしていた私が、学んだことを書いていくつもりだ。

何から書くべきか、かなり迷った。塾との違いや営業のコツなどが思い浮かんだが、まずは私の受けた衝撃について書こうと思う。

なお、この記事での内容は特定の人物、団体、子育てをする様々な家庭に対して何らかの批判をする意図は一切なく、私自身の経験から感じたことを単に述べているにすぎないことを始めに書いておく。

 

近年塾や家庭教師といった教育系の習い事への関心は高まっている

 

家庭教師をつける3種類の家庭

家庭教師ときいて世間一般は何を思い浮かべるだろうか。お金持ちが子どもにつける、東大生のバイト、時給のいい仕事。大抵の人は何かしら「高尚な習い事」として家庭教師を考えるだろう。しかし実際のところ、家庭教師をつける家庭は3種類あると思う。

1つ目:受験

1つ目は子どもが何かしらの受験をする場合。中学受験であったり難関高校や難関大学であったり色々だが、とにかく子どもの学力をプラスへ持っていきたい場合だ。
こういう家庭は一般に、あまり家庭教師を選ばない。塾へ行かせるパターンが多い。受験させるために家庭教師を選ぶ少数派は、「塾に行かせたいが近所にない」という理由である場合が多い。
そして少数派たちは、そのほとんどがハイジのCMで有名な某家庭教師派遣会社と契約するのである。

2つ目:発達障害ADHD不登校などの影響

2つ目は子どもに何かしらの特性がある場合だ。発達障害グレーゾーンやADHD不登校などの理由により学校の授業へついていけていない。したがって子どもの学力をマイナスからゼロへ持っていきたい、という場合である。
こういう家庭は家庭教師を検討することが多い。塾へ行かせて合わなかった、もしくは保護者が塾は合わないと思っていて、家庭教師を希望しているパターンが多かった。

3つ目:経済的な理由

子どもが多い、習い事が多い、収入が少ない、ひとり親家庭といった様々な理由により、経済的に選べない選択肢がある家庭も存在する。そういった家庭では「塾は高いだろうから、家庭教師なんてどうか。教えてくれる先生が一人なら塾より安いだろう」という考え方をしばしばするようだ。

 

自分の高慢さに苛立つ衝撃:「2つ目」の家庭たち

私にとって衝撃的だったのは、前述の「2つ目」に該当する家庭だった。

 

これまで私は公立小学校、公立中学校、公立高校と通ってきた。自分が決して箱庭で純粋培養された人間ではない、という謎の自負があった。そんな私にとって、発達障害不登校、いじめといったものは”ニュースで見かける遠いどこかの現象”でしか無かった。塵芥に揉まれている自分でさえそうなんだ、彼らは少数派だろう、そう思っていた。

 

家庭教師の営業をしていた9か月間、多くの家庭と話した。そのほとんどは、発達障害グレーゾーンや不登校といった、学力を平均にしたい子ども達だった。

彼らの数の多さ、苦労、教育現場の現状、保護者の方の多様な表情に衝撃を受けた。何より、自分の認識の高慢さに苛立ちがあった。

これまで大して苦労もせず、平均程度には勉強が出来て、大学まで行かせてもらっている自分を「恵まれている」と感じなかった自分に腹が立った。

 

常識の通じない衝撃:「3つ目」の家庭たち

何らかの理由で経済的な課題があり、塾を”選ばない”のではなく”選べない”家庭もある。こういった家庭が家庭教師を検討する場合、次の2つの背景が存在するパターンが非常に多かった。

  • 通信教育や個人経営の塾を経験し、失敗している
  • 「2つ目」の家庭にも該当する

前者は例えば「べ〇ッセ」や「く〇ん」であったり、教師を定年退職した人が一人で経営する塾などだ。後者はすなわち、子どもが何らかの特性を持っている場合である。

経済的に課題がある場合、子どもに習い事はさせず本屋で教材を買ったり保護者が教えたりするのが一般的であろう。しかし子どもの学力向上に対する必要性が高い場合、例えば子どもが特性を持っている場合、こうした教育では対応しきれないこともある。

また、塾が一般的で家庭教師はマイナー、という偏見とこうした状況に挟まれた保護者は、妥協案として通信教育や個人経営の塾を選ぶことがある。

 

さて、見出しで書いた「常識が通じない」という点だが、家庭教師に対する費用感の問題である。家庭教師に対する知識や経験が不足している、という前提はもちろん承知している。しかしなぜ多くの家庭が〈く〇んとか通信より安いんでしょう?〉と考えるのか。

一人の先生をその子の為だけに選び出し、先生はその子の為だけにカリキュラムを組んで教える。いわばオーダーメイドな教育方法である。なぜそれが対集団の教育より安いと考えるのだろうか。この認識の齟齬があった時、私の営業はここの説明から始めなければならなかった。

 

家庭教師は彼らに合っているのか

保護者から実際にきかれることの多かった質問だ。家庭教師はうちの子にあっていると思いますか?先生方はグレーゾーンに関する専門の研修を受けているんですか?

結論。あっているかは場合による。研修は専門的ではない。

 

例えば何らかの理由で不登校の場合、家庭教師は有効な選択肢だろう。家や部屋の外に出る必要が無く、先生の方からやってきてくれる。自分のテリトリー内で勉強ができるという点は、子どもにとって安心材料であると思う。

グレーゾーンなどの場合。これは正直、子どものIQや性格によるとしか言えない。WISCと呼ばれる知能検査を受けるなどして、その子の特性を正しく把握する必要があるだろう。

 

終わりに

はっきりと言いたいのは、発達障害グレーゾーンや自閉症などの特性を持つ子どもに家庭教師がついて、勉強できるようになったという事例を私は何度も見た。

一桁同士の足し算を両手で計算していた小学校高学年の子が、割り算の筆算までできるようになった。営業に行っても部屋から出てくれなかった中学生が、家庭教師の先生と仲良くコミュニケーションをとるようになった。

こうした話を保護者の方から電話できけた体験があったからこそ、私は超絶ブラックな職場環境でもなんとか続けられたし、上司から罵倒されてもなにくそと踏ん張れたと思っている。