大学生ユードリナの記録【長野県立大学】

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「催眠術」は実在しないオカルトなのか?【催眠術について①】

催眠術という単語をきいて、みなさんはどのような想像をするだろうか。懐中時計をプラプラ揺らす?怪しいセミナー?いかがわしい漫画?

 

昭和や平成のテレビ番組では、オカルトブームの影響もあってかUFOなどと一緒にしばしば扱われた題材であると思う。しかしそれが果たしてただの演出なのか、現実に存在する技法なのかは一般に知られていない。

私は中学生の時から催眠術について調べている。ネットに転がる怪しい情報や妄信の一切を排し、私の実体験と調べた内容を書いていきたい。

 

 

催眠術は存在するのか?

いきなりだがこの結論から述べよう。催眠術は実在する当時中学生だった私が友人に試して、うっかり成功してビビったくらいには安易な技法なのである。

催眠術の存在が世間一般で疑問視されている原因は、その存在の立証の難しさにあるだろう。脳波の測定などで科学的に存在が証明されてはおらず、テレビ越しに見る視聴者にとっては被術者が演技してるかどうかわからない。実際、催眠術を扱ったバラエティ番組では被術者が演技をすることも多かっただろうと思う。

ではなぜ存在するといえるのか。催眠術の存在をたしかめる方法は現状ただ一つ、自分で誰かにかけるか、誰かにかけられるかしてみるしかない。残念ながら催眠術師の知り合いはいなかったので、私は自分が誰かにかけてみることを選んだのだ。

 

催眠術との出会い

当時中学生だった私は、心理学に興味を持っていた。人とのコミュニケーションが極端に苦手だったので、何とかしてコミュニケーション能力を上げたかった。そこで、「雑談術」や「コミュニケーション力」に関する心理学的な本を読み漁っていた。

この時の読書経験を通じて、私はコールドリーディングやマジック、メンタリズムに興味を持ち始めた。そして最終的に行き着いた疑問が「催眠術は実在するのか?」という疑問だったわけである。

 

催眠術をどう学んだか

いざ催眠術を知ろうと思っても、案外とその技法に関する情報は少なかった。書籍を探しても見つからず、ネットに転がるのは眉唾物の情報ばかり。なんとかたどり着いた先は、1つの本と1つのテレビ番組だった。

『メンタリズムの罠』という、イギリスの有名メンタリスト「ダレン・ブラウン」が書いた本がある。彼は海外のテレビ番組で非常に有名になった人物で、日本でいうDAIGOのような人気っぷりらしい。その本にはマジックやメンタリズムの他、記憶術や催眠術についても書かれていた。催眠術に関する基本的な原理やしゃべり方、流れなどはこの本から学んだ。

蛇足だが、この記憶術は「記憶の宮殿」と呼ばれる暗記術についてであった。海外ドラマ好き、あるいはシャーロキアンならご存じだろうイギリスのドラマ「SHERLOCK」に登場する暗記術である。

とあるアイドル番組も参考になった。平成令和の世の中では珍しく、その番組では催眠術師が呼ばれてアイドルに催眠術をかけているようだった。プロの催眠術師がそれをかける場面は、いくつかの点で大変勉強になった。

 

催眠術は万能の技法か

ドラマや映画、漫画ではしばしば催眠術が登場する。そこでは対象者の耳元でそっとつぶやくだけで、相手があっという間に言いなりになるという何とも怪しい技法として描かれている。

では実際のところ、そんなことが可能なのだろうか。個人的な体験に基づけば、「場合によりけりだがほぼ不可能」といえる。絶対と言えないのは私がその道のプロフェッショナルではないからだが、少なくとも映画「グランドイリュージョン」のような事はプロでも無理だろう。

催眠術には術者と被術者との間に信頼関係が必要である。また、催眠状態は永遠に続くものではなく、せいぜいが数十分といった具合だ。静かな場所、術にかかってみたいという被術者の思い、体質なども必要だ。

もしこれらがそろっていて、十分な時間をかけたとしよう。それでもせいぜいが「カタレプシー」と呼ばれる筋肉の硬直や味覚の変化、リラックス効果を生み出すレベルである。この現実を知って、私は催眠術系の映画や漫画を冷めた目で見るようになってしまった。

 

催眠術の危険性

上記の通り催眠術は万能の技法ではない。では全く危険性が無いといえるのだろうか。催眠術に関して、術者と被術者の両者に様々なリスクがある。

まず術者について。第一に、頭のおかしな危険人物と周囲に思われる可能性がある。催眠術の世間一般での立ち位置は”怪しくて危険な、バラエティ番組の演出”だろう。それを行えると発言するのは、社会的な信用を失うリスクが十分にある。

第二に、術がかからなかった場合の気まずさ・信用喪失がある。催眠術は百発百中ではない。どんなに信頼関係や事前準備があろうと、体質的にかからない人はいる。

第三に、被術者から非難されるリスクがある。催眠術は悪く表現すれば、被術者の意識がない状態で相手をおもちゃにする技法である。場合によっては術後に周囲から自身の醜態をきかされ、被術者から非難されるだろう。また、前述のブラウン氏の著書では『ステージに呼んで催眠術をかけた観客の一人が、術後しばらくして飲酒によるアルコール中毒で救急搬送され、催眠状態が続いていたのでは?と家族により非難された』という怖いエピソードが記されていた。

 

被術者にとってのリスクは、自身が認識できない内に何をされるかわからない、という点である。催眠状態は完全な睡眠状態ではないが、無意識に近い状態となる。目覚めたときに自分の身体や感覚が自分の意図しない状態になったとき、人によっては恐怖や怒りを覚えるだろう。

 

催眠術はただの娯楽か

催眠術は一般的にバラエティ番組で怪しい技法として取り上げられることでしか人の目に触れない。しかし実際には様々な場面で活用されているそうだ。

例えばトラウマの解消に活用されているとの情報がある。幼少期の経験から犬や暗闇、異性を極端に恐怖するようなトラウマを抱えている人はいるだろう。そのようなトラウマは心療内科での治療が一般的だろうが、催眠術的なアプローチで解消を目指すこともあるそうだ。また、アメリカ陸軍では恐怖や痛みといった感覚を無くす手法として研究されていた、という話もある(これに関しては幾分か陰謀論の香りがするが)。くわえて、単純なリラックス効果もある。催眠状態は近年ストレス解消手段として注目されている瞑想と近しいため、自己催眠といわれるような形でリラックスできる場合もあるだろう。

 

終わりに

冒頭で催眠術を「実在する安易な技法」と述べた。それは中学生だった私が独学で挑戦できた事実からも明らかである。しかし、安易だからといってノーリスクなわけではない。正直言って、この技法に関してなんの規制も研究もなされていないのが不安でしょうがない。この記事が悪意を持つ人物、もしくはオカルト過激派ではなく、純粋な興味と知的好奇心を持つ人々に読まれることを望むばかりである。